アリダ・ヴァリの死を悼む。 |
今朝の新聞でイタリアの名女優、
アリダ・ヴァリが死んだことを知りました。
私の大好きな女優さんでした。
華やかな映画界で、
とても知的な人でした。
私が見たのは有名な「第三の男」と「かくも長き不在」
どちらも戦争の傷がグッサリと生々しい、
暗い映画でした。
低い声でせりふを一つ一つゆっくりと語り、
華やかな映画界で、
とりわけ美人でもない彼女でしたが、
陰のある深い演技でした。
凡庸な日常生活の中で薄紙のように重ねられていく、
喜びや悲しみを、
懐に包んで生きた女の知性が、
いぶした銀のように光る、
ステキな女優さんでした。
もうとっくに亡くなられていたと思っていましたので、
今朝その名前を新聞に見つけたとき同時に、
シャンソン歌手のダミヤやエデット・ピアフなど
戦前から戦後に活躍した女性達を思い出しました。
以前にご紹介した映画「八月の鯨」のベティ・デビウス、
リリアン・ギッシュ、それに、
キャサリン・ヘップバーンなど
それぞれがきちんと足場を持った、
存在感の在る、
私の憧れの女性達でした。
それともう一つ思い出したのは、
中学の頃、
試験の最終日など、
学校が早く引けた日に、
よく映画館に行きました。
その頃は映画館に行くは父兄同伴の許可が必要だったと思いましが、
それを無視して友達と行き、
帰りにその近くのラーメン屋にもよく行きました。
そこのラーメンはチャーシュウの代わりに
イカのてんぷらが入っていて、
それが妙においしかったのを覚えています。
中学校は、片瀬中学、
映画館とラーメン屋は江ノ電藤沢駅の、
すぐ近くだったと思います。
もうずーつと、
遠い昔のこととなりました。
今でも第三の男のジョセフ・コットン、オーソン・ウエルズ、
そしてアリダ・ヴァリの大きい帽子と長いコートは
鮮明に覚えています。
もうみんな居なくなりました。
戦後の幕が一つずつ降りていくのを、
感じます。