ほんとうの贅沢///. |
八木繁さんの根来塗りの片口漆器です。
小学生の頃
月に1度くらいの間隔で
洋食屋さんに行きました。
そのころレストランというのは
町に一軒くらいしかなく、
私にとってはエビフライがご馳走の中の
ご馳走でした。
肉が苦手でしたので、
いつもエビフライを食べていたと思います。
父がなぜ子供達を度々
洋食屋さんに連れていったかというと、
これからの時代に備えて
ナイフとフォークを使いこなし
西洋のテーブルマナーがからだに身につくようにと
配慮したからです。
将来そういう席にでても
物怖じせず
キレイに洋食を食べこなせるようにと・・・。
でも今の私はお箸が一番。
顰蹙を買おうがかうまいが
今度から
海外旅行に行くときは
絶対お箸を持っていこうと思います。それも
ホンモノの漆塗りのお箸を・・・。
斉藤茂吉の奥さんの龍子さんが
海外でいつもお箸を使っていたということを
聞いたことがあります。
さて今日は日本のすばらしい伝統ツールというか
漆器について書きたいと思います。
私は根っからの食いしん坊です。
でもそれは美味しいということと同時に
美しいからです、日本の食事は。
特に漆器に関しては、
縄文時代から、
つまり6000年前から
ズーット使われ続けてきた歴史があり、
単に美しいだけでなく、
いかに美味しく食べさせるかという
日本人の知恵と独創性が詰まった逸品です。
まず3年くらい乾燥させた木地を型にくりぬいて
その上に下地という漆をぬって形を整えます。
外側からは全く見えないこの下地づくりを手抜きすると
木地の中に水がしみたり漆がはげやすくなったり
します。
ここが肝心なんです。
次に
下塗り
さらに漆を重ねて塗っていきます。
木地がどんどん漆でコーティングされ
水が入らないように又落としても衝撃がないように
漆を重ねて塗ります。
その次に研ぎ
これは最後の仕上げの上塗りのときの漆が
しっかりと定着するように
下塗りした漆の表面を炭やペーパーサンドで
ざらざらに研いでゆきます。
つまりその表面を荒くすることにより
より漆がしっかりと定着していくのです。
最後に仕上げの漆を塗ります。
ちょっとしたほこりか何かなどが
絶対つかないように
凄く緊張のいる仕事らしいです。
もうお分かりですね、
木という乾燥しても尚生きる
素材を生かすために
その木を保護するために
これまた天然の漆の樹液を
塗り
丈夫で長持ちする絶品の食器として
漆器が生まれ育てられました。
天然の漆の樹液は生きています。
木とともに環境に呼応し
木地を守ります。
多くの人が勘違いしていますが
じつは
漆器は丈夫で長持ちです。
それに
何度でも塗り替えがきき、そして
塗り替えるごとに新品同様に
生き返ります。
その特質は
断熱効果、保温性。殺菌力など
しかもすべてが天然性のものです。
それに漆器の中に入れたご飯やお汁は
覚めにくく
その分旨みが落ちません。
ぜひご飯は漆器で召し上がってください。
また味噌汁やお吸い物も
まずは漆器でしょう。
漆器は決して安価ではありません。
だいいちは漆の採取がなかなか大変なのです。
漆は漆掻きという人たちが漆の木から樹液をとります
1本の木から200グラムくらいしか取れないそうです
次に
木地師が器の原型を作り
塗師がうるしを塗り、
細工は蒔絵を施す絵師が加わることもあり、
何人かの職人さんの合作でもあります。
たくさんの手間と暇がかかっているのです。
傲慢かましてスミマセンが、
本当の贅沢とは
こういう器を
日常的に使いこなせることでしょう。
なにしろ6千年の文化をあじあう事なんですから。
言っときますが
身銭を切らずに
いい思いなんかできませんからね・・・。
漆の美しい透明な赤や黒の器にうつしだされた
日本のお吸い物は
世界に類のない
美しいスープです。
今自由が丘で石川県山中の塗師
八木繁さんの個展が行われています。
漆器はそれがホンモノか偽物かを見抜くのが
なかな容易ではありません。
八木さんこそ
私がお勧めする
天下の塗師でもあります。
良かったら是非見てきてください。
そして是非、
漆器でご飯を食べてみてください。
では・・・。