わたなべいくこ |
○わたなべいくこ・・ 私の筆(あし)あと…怒りのほこ先… 絵画
雪深い秋田で生まれた彼女の作品は、
雪で凍結したように色彩が澄み切っている。
最初の出会いはニヒル牛という箱貸し屋さんで、
店の中に親指の爪ほどのちいさな小さなブローチがありました。
透き通った色で描かれた小さな家や花や風景の中に、
尋常ではないほど透明な精神的思惟の世界が描かれてありました。
壊れそうに繊細だが、しゃんと前へ向いた顔つきの小さな絵画たち。
しかもそれは紙で作られたブローチでした。
彼女が全身を傾けて描き出そうとしているのは、
彼女のサブタイトルの「怒り」の放出から始まる全感情が色となって形となって放射され、
渦巻くエネルギーの中で自我の澱みが濾過された
美しい女の世界です。
深い積雪の下で綴られ、磨かれた物語が地上に放つ輝きなのです。
その中には奥ゆかしくも骨太な、
日本の雪国の女性の魂が籠められています。