薪を背負って新緑の峯を下る。 |
いつもご紹介している良寛の漢詩
今年はなんだか気分がなかなか乗らない。
でも
もう花も終わりになってしまったけれど
やっぱり
ご紹介します。
題 看花至田面庵 訳 田面庵に花を看る。
桃花霞挟岸発 桃の花が岸を挟んで霞のように咲いている。
春江若藍接天流 春の川が藍色の帯のように天に接して流れている。
行看桃花随流去 浮かんでは流れて、桃の花が去ってゆく
故人家在東頭 亡くなったあの人の家はあの流れの東の先のほうにあったなあ。
良寛が自分の親友だった有願和尚を忍んで
書いた詩です。
春の川の突き当りには
藍色の空がつながっていて
その先に私は宮澤賢治の
『空もいつかはすっかり張れて、桔梗いろの天球には…』という言葉が
重なります。
賢治の空は雪の積もる真冬の空ですが
良寛の空はその桔梗いろが
次第に透明になって
春の川と融けあう藍色の空です。
もう一つ
私が大好きな
良寛の詩
これも以前ご紹介しました。
ふつつかながら
私の自己流の訳ですがどうぞ、
薪を担うて 翠峯を下る 薪を背負って新緑の峯を下る。
翠峯 道平らかならず 若葉の峯はでこぼこ道で
時に息う 長松の下 息切れして高い木の陰で休み
静かに聞く 春禽の声 しーんと静まり返った中に
小鳥の声が
聞こえる。
ことしは
災害で亡くなった
時代の同志の人々を思う
自分の寂しさや空虚さに
春の華やかさが
悲しみを悼む心と
重なって
いつもより
深くせつないものとなりました。
しかし今、木々に新芽が吹き
ぐいぐいと青葉は
空をめざして伸びています。
さあー働かねば・・・!
薪を背負って峠を下らねば・・・と
思います。
でも時として
いきようとする
生命の営みの合間に
しばし立ち止まり
しーんと静まり返ったなかに立つ自分を
忘れないようにと
思います。
すこし昔になりますが、良寛さんという人の存在を改めて教えてくださってありがとうございました。
桃の花も終わろうとしているこの季節、僕も彼の詩を引用させていただきました。