アンデルセン 火打ち箱より・・・・! |
童話であるにもかかわらず、
物語の展開が何段階も重層の起伏に富み
読み応えがある。
また
登場人物(人間だけでなく)達の語ることばは
示唆に富んでいるが、
その示唆がいわゆる勧善懲悪や
寓話の持つ
道徳性や倫理性ではなく、
説教くささなどみじんも
ない
子供向けミニ小説のようで、
登場する
生きもの達が
それぞれの
”生きる”という現実を
語る。
凡庸な作家であるなら
読書対象の子供を
いわゆる・・・・教育をうけるもの、
お話から・・何かを学ぶ・・・という既成観念に
捉われてしまうだろうが、
アンデルセンが語っているのは
ひとりのちいさな人間に、
”にんげん”ってなんだろう、
”いきもの”ってなんだろう
”生きる”ってなんだろう
”その生きている社会”って
なんだろう・・・?>
本当のとこは
どうなのさ!・・・と
たたみかけてくる。
ちなみにブリューゲルの事を描いた本では
ブリューゲルの中に登場してくるのは
子供ではなく、
当時、ちいさな人間として
労働力のちいさな人間として
扱われていた子供であると
たしか堀田善衛さんの本だったと思うが
書いてあった気がする。
つまり子供に対して
自分達より
未熟な人間として中身を薄めたり
始めに結論ありきではなく、
作家は全力で童話製作に向かい
その製作途中で
格闘しながら
話しを進めている。
それからにして
彼は、当時の世間に対して
かなりニヒルで
時にシニカルな感情をもっていた
知能の高い人間のように
思います。
アンデルセンは19世紀の初頭の
デンマークで、
貧しい靴職人の息子として
生まれました。
母は教育のない文盲であったが
父親は、靴職人にしては
かなり知能が高く、読書ずきで
その分、世の中に対して批判的であり
また進歩的な思想を持っていたようだが
靴屋という身分と思想との精神的確執からか、
戦争に行き、
帰ってきたときは
病に侵されており(それが体の病気なのか
精神に異常をきたしていたのかは、不明ですが)
アンデルセンが11歳の時に亡くなってしまう。
アンデルセンも今でいう”引きこもり”的な子供で
学校に行っては登校拒否状態になる・・という
繰り返しであったが
本人自身は、、
自分には才能があり、いずれは
偉業をなしとげて成功するという確信のもと
野心と志高く、
14歳で首都コペンハーゲルへと
乗りこんでいく。
おそらくこれは父からバトンされた
アンデルセン親子の矜持であると
私はおもいますよ。
しかしそうは甘くなく
貧乏と飢えの続く中で
道化や俳優、そして戯曲家として
食いつなぎながら
しかし17歳の時に運命的な出会いをします。
当時の大物政治家、ヨナス・コリンが
彼の後見人となり、
そのおかげでアンデルセンは大学へと進学し
そして作家としてデビューします。
しかしなかなか芽がでないまま
30歳の時に最初の小説『即興詩人』を出版しました。
ここから彼の躍進がはじまります。
この30歳の時にかれは童話も書きはじめます。
(彼は父親は人形芝居の道具の製作、上演をも
おそわっています。)
その最初の童話集の冒頭の作品が
「火打ち箱」という作品です。
この作品の主人公は
帰還した兵隊です。
そしてこのお話は
「アラジンの魔法のランプ」や
「アリババ」、「ヘンデルとグレーテル」などから
かなりパクッて来ており
オイオイ・・・と云う感じではあるんですが、でも
彼のイニシャル作品、
つまり記念すべき第一作として、
靴屋であることに絶望し
戦争に行き、更に挫折して帰ってきた彼の父、
つまり
父を復権させる、
させたい・・・というアンデルセンの深層心理にある
父の復権イコール自分のアイデンティティーの
再構築・・・のようにも
思います。
明らかに才能の基礎を与えたのは
彼の父であり、
父の知能の高さと見識をもって
身分は低くとも
その魂とプライドの高さをかざして
アンデルセンは世の中に対峙しています。
お話は
兵隊が歩いていると
「金持ちになりたくないかい?」と
魔女に呼びとめられます。
魔女はそばの木の穴に入ると
銅貨の部屋、銀貨の部屋、
金貨の部屋・・と順番に
部屋があり
それぞれの部屋には
目がティーカップくらい大きい犬(銅貨の部屋)
同じように目が石臼ほどもある犬(銀貨の部屋)
そして目が円塔くらいの大きな犬(金貨の部屋)
が番犬としており、しかしそいつらは
魔女の貸してくれた青いチェックのエプロンに
のせてやるとおとなしくなるので
好きなだけお金を取ればいい
その代りに
そこにある埃だらけの火打ち箱を
取ってきておくれ・・と云います。
兵隊は魔女の言うとおり
番犬を鎮め
好きなだけのお金と
火打ち箱をもって
戻ってくるのですが、
火打ち箱になにか秘密があると思い
魔女の首を切って殺してしまいます。
そして大金持ちになり町へ行き
遊興し、そのうちにお金が尽きたとき
火打ち箱をこすって煙草を吸おうとすると
アラジンの魔法のランプではありませんが、
あの、目が異常に大きい犬があらわれます。
そしてご主人さまの願いを
なんでも叶えてくれるのです。
兵隊はその町には
誰も見たこともない
御姫様がいる・・という話を聞き付けてき、
犬に頼んで30秒でいいから
そのお姫様を連れてきてくれと
頼みます。
言われたとおり
お姫様は夜、眠ったまま
犬の背に載せて
兵隊の家まで運ばれてきます。
そういう事が何度か続くと
兵隊はそのお姫様と
結婚したいという野望をもちます。
しかし姫の異変に気づいた王と妃は
召使を使って
兵隊の家をつきとめ
彼を捕縛してしまいます。
そして彼が絞首刑になる寸前に
最後の願いとして
あの火打ち箱で煙草を吸わせてくれと
哀願し、
火打ち箱をこすった瞬間に
三匹の犬があらわれて
王様と妃や兵士たちを蹴散らし
彼らは地面にたたき付けられて
しまいます。
それを見ていた
群衆は大喜びで口々に兵隊に
王となって姫と結婚してくれ・・と叫びます。
まあ―そういうわけで
兵隊と姫が結婚して
この物語が
おわります・・・が。
下層階級の出身で、
身分の低い洗濯女のイカレた息子・・・といわれた
アンデルセンが、
物語の中で自分を
復権したと言えばかんたんですが、
私は彼が一番最初に兵隊を
主人公にしたところに
彼の父親に対する哀惜と敬慕の念を
感じます。
知能も知性も高かったのに
人生が敗北的であった父親の
野心や上昇願望をまず
はたしてあげたのではないかと
思います。
そして注目すべきは
眠ったまま
犬に運ばれてきてまた
眠ったまま返されるという、
お姫様です。
彼女自身は、
朦朧とした意識の中で
それが夢なのほんとうなのか
わからない。
もしかしたら
この作品を書いたときのアンデルセンのなかの
アニマ・・つまり女性性は
まだまだ定まっておらず、
のちのあの素晴らしい物語の主人公の
女性たち、
親指姫や
人魚姫そして
雪の女王などが、
次々と生まれ、
登場するまでの
予兆として
この眠ったままで
なんだかわけがわかんない・
つまりまだまだ姿が確定できない
彼の女性性が
あったのではないかと
思うのですが・・・・?
どうでしょう・・・。
彼の顔から察するに
かなり女性的なものも
感じます。
このアニマ(女性性)を
物語の中で統合できだすと
彼の中の価値観や
幸福感に変化が起きてくるはずです。
それはどのものがたり当たでしょうか、
興味ぶかいです。
今日はりっぱになった
兵隊の姿と
犬の背中で眠る姫の
挿画を載せておきます。
・小峰書店発行 「アンデルセンと13の童話」より
挿絵 ジョエル・スチュワート

兵隊と魔女

金持ちになった兵隊

眠ったまま犬の背で運ばれる姫!
やっちょります!
● 最近、ブログを書くだけで精一杯で、ちょっと疲れてきたので
コメントンに関しては、お返事を書かないことにいたしました。
でも記入はご自由にどうぞ!

