テオ・アンゲロプロス監督の映画 「エレニの旅」を見ました。 |
「エレニの旅」を見ました。
芸術的な絵画のような
美しい映像をみながら
心が融けていきました。
一方その重さに
言葉をなくしました。
しかし何よりも
力もなく
弱く
無力なもの、
そして無能なほどに
打ちのめされている人間が
エレニに託されていることに
心が惹かれました。
それは男性社会が歴史の中で構築してきたものが
次々に崩壊し自滅していく中で
その片隅で
いちばん奪われた者であり
いちばん
うちひしがれていきている者であり
いちばん弱く
無力な者、
それがエレニにたくされている。
それは
すべてを奪われつくしても
この世界の底の底の底の片隅で
微かに
密やかに生きている者の
無言の悲しみと
懊悩です。
それは
もしかしたら
いちばんだめで
だれからもふりかえられることを
あきらめている人間を
しっているひとにしか
みえないかもしれないね。
そして
ここには老成のテオ・アンゲロプロスがいる。
もしかしたら
男目線とその価値意識で生きている者に
エレニの心の風景は
わからないかもしれないよ。
洪水とは。
水は人間の無意識世界を表しています。
無意識の中の感情の渦、
その水が洪水になって
人間を襲う。
洪水は人間が無意識の中にもつ
欲、悪、邪の感情が臨界を越えて
コントロール不能になり
人間を襲うことを表しています。
それは人間の無意識にある悪(エゴ)や不安や恐れが
集団でリンクし
集合され、増幅されて
ついには
人間のいっさいを奪う
恐ろしいエネルギーになるのです。
ファシズム、
戦争、
紛争
そして自由のない独裁政治と
人間支配。
エゴイズムの中で増幅され
他者を収奪する人間の業が
集合し
人間が
人間としてある理性を奪い
感情に溺れて
いっさいが
その渦に呑みこまれてしまう、
それが
集合されたものが
洪水です。
聖書でも
神は洪水を予言します。
だからこそ
映画では
羊たちは
木に吊るされてしまう。
それも
同じ羊であろう
人間の手で
です。
最初にロシアから逃れた難民が映し出されます。
その中に両親を亡くした
小さな少女のエレニがいます。
そしてその人びとが落ち着き先として
ブリューデルの絵にでてくるような
小さな村があり
その横を流れる川の中を
大人になり、しかし
心身が傷つきはてている
エレニを船が運んできます。
象徴的です。
もう十分に傷ついているにもかかわらず
エレニは
これから
人間の無意識が集合してできる
河の中を
洪水の中を
生き抜かなければならない。
彼女が愛したのは村の長ではなく
アコーディオン弾きの男です。
そして音楽こそは
洪水の対極にある
人間の精神性の世界です。
すべてを超えて
すべての人間の内面を突き抜けながら
その波動が流れていきます。
音楽とは
調和であり
平和であり
浄化と恵みでも
あります。
それは洪水の感情の対極にある
人間の
創造の世界でもあります。
エレニが愛したものは
ことごとく奪われていきます。
そして
エレニは
無力な自分のなかで
夫と約束した
河のはじまりを
探します。
河の始まりは海と空です。
海は大いなるふるさとであり
空は
未来であり希望であり
永遠です。
そこにいちばん近いのは
山の上です。
そして時空はいつも
<永遠と一日>の中にあります。
もう河と海とがその淵をこえて
境目がみえなくなっているそれが
薄暗い空を背に
エレニとその息子の遺骸の前に
滔々と
ひろがります。
暗い不安にみちたその海と河の前で
エレニは
慟哭します。
でも神のまなざしは
いつも
いちばんよわい人間のそばにある。
そして夫アレクシスの声が聞こえます。
「昨夜、夢で、君とふたり、河のはじまりをさがして
山の奥深くに行ったよ。
いただきには小さな村があり、
君が緑の葉にてをさしのべ、
葉から水がしたたり落ちた、
地に降る涙のように・・・。」
河のはじまりは
山の上にあり
そこには
小さな村がある。
その村は
エレニでもあり
アレクシスでもあり
人間でもあり
私たちでもあります。
奪われた
無力で脆弱なエレニがさしのべた手の葉から
滴り落ちた地に降る涙は
何なのだろう。
淵がなくなった河と海とはなにか。
それを探してゆく山の上の空は
どんよりと重い。
でもいただきには
ちいさな村がある。
河をさがして
旅をして
山をのぼらねば・・・。
そもそも人間の自我は
自分と他者との
対立の中で芽生えたものです。
その自我の対立を浄化して
小さな小さな
空にいちばんちかい
山のいただきのちいさな村にある
緑の葉のそばに
わたしも行きたいです。
小さな
見えないくらい微かな愛の
世界です。

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