玉堂の世界で! |
青梅に行った際
玉堂美術館に寄った。
昨日から模様替えをしたという展示は
冬バージョンになっていて
玉堂が描く
深々と雪が降りしきる中の
日本の風景はやはり
美しい!
最近私は
しょっちゅう
自分が疲れているなあ~と
思います。
それは歳のせいもありますが、
現代の文明が
おそろしく目まぐるしいのと
神経が外部世界から
強い攻撃性を受けるからだと
思います。
そういう時
玉堂の絵をみて
ふう~っと生き返る。
玉堂の写生は
すさまじく細密に緻密に
モチーフを描きとっている。
それはプロの画家として
かなり厳しい写生トレーニングを
自己に課していたと
思われる。
の
だが、
しかし
いざ絵を描こうとするときの
玉堂は
そういう
緻密で細密で厳しい写生を
いっさい忘れて
神経質な
空気も消し去さり、
のどかで
ゆったりとした時間が流れる
絵の世界を
現わしてきます。
やはりそこに
素晴らしい名匠の世界観が
あります。
この絵は
初春の春雨が降るなか
雪解けの水が流れて水車が廻り
そこに桜が枝が
挿している。
※絵はすべて玉堂美術館で買った絵ハガキの写真です。

その川の淵を
傘をさした二人の農婦が
下駄をはいて下っていきます。
その背には粗朶が背負われており
山の労働を終えた
何とも言えない
開放感がある。

私はこの絵が大好きで
ホンモノは高価すぎて買えませんから
レプリカを自分のベットのそばに
掛けて始終ながめては
眠りにはいる。
この絵も
茅葺屋根に生えた雑草の花を
職人が刈ろうとしている絵で、
屋根のこちら側にはイチジクの木が
実をつけている。
なんとなく
春から初夏の日よりを
感じさせてくれる。


そして次のこれは
夏の絵だと思いますが
水かさが増し
滔々と流れる
或は
悠々と流れる川で
男たちがアユ釣りをしている。
※私が勝手に鮎釣りと決めてしまいました。



単純にそして明瞭に描いてゆく
広々とした構図の玉堂絵は
その裏にある
プロとしての細密で厳しい絵の修行の跡など
みじんも感じさせず、
見る人を
おおらかさのなかに連れてゆきます。

この絵を見ながら
これに似あうとしたら
多分蕪村の句だな~と
探したら
一句ありました。

蕪村53才の時の句
川狩りや
帰去来といふ声す也
意味は
『川で魚を釣っていたら
お~い、帰るぞ~っという声が
聞こえた。』
というものです。
川魚を釣り
もうたくさん釣れ
魚籠もいっぱいだから
「かえるぞ~!」と仲間に
呼びかけている。
春雨と水車と農婦の絵も
茅葺の屋根の絵も
この魚釣りの絵も
どこか
人間の穏やかな機微が
ながれています。
わたしとしては
いつまでも
こういう世界に
留まっていたい自分がいる。
あの水車と春雨の絵に似あう句も
みつけました。
春雨や
暮れなんとして
けふも有
「静かに降る春雨の日が
きょうも暮れようとしている。」
というのと
春雨や
ものがたりゆく
蓑と傘
「しとしとと降る春雨の中を
何事か語りゆく、蓑と傘の二人が・・・」
たぶん蓑は男で傘は女を暗示していると
思うのだけれど。
あの絵に似あうのは
どっちの句かな~?
蓑は背負ってないし
ふたりとも女だけれど
ものがたりゆくの
ほうかな~!