智に働けば角が立つ、その2 |
つれあいが社長、会長をしていた会社を
退任するにあたり
社員の皆さんに最後の贈りものとして
私が作った短編映画です。
私達が結婚して彼がこの会社へ就職して以来
この会社は労働争議と倒産の危機の中にありました。
この会社で労働争議が始まった途端に
彼は私があれよ、あれよとみているまに
労組の委員長になり、
それからはず~っとひたすら
会社にのめり込み、
再建してさらに
その企業分野では日本一になるまで
40年近く
彼の愛情とエネルギーは
その会社に注ぎ込まれました。
しかしそれを家族の目で見ると
彼の愛情は家族より会社のほうへと
注ぎ込まれ、
家族は置き去りにされたという感じです。
ただ一つの救いは
会社という人間の場は
一日中そこで働く人々にとっては
●生きがいと創造の場であらねばならないという
彼の思想や理想を実現するという
彼自身の志でした。
そのためには全精力を会社に投入し
家族を犠牲するしかない。
家族など省みる心の余裕やエネルギーなどは
なく、
私はそういう彼を受け入るためにも
妻としても家族としても
彼に依存もしないし、
拘束もしない。
反対に
私はわたしとして自立するということを
課しました。
こう書くとカッコイイですが
もうそうしなければ生きれないというところまで
精神的にも
物理的にも追い込まれたからです。
私も弱くデリケートな人間ですからね
ひとりで子育てをしながら
さらに経済的な負担も負いながらの日々の中で
葛藤し、格闘しての毎日でした。
そういう日々の中で
考えて、考えた結果
もう自分を半ばあきらめて
妻という自分
女という自分を
捨てててしまいました。
そうすることで一切を解決できると考えました。
※しかし脳科学や人間心理のメカニズムを
知り、人間とはなにかの本質を究めれば
極めるほどに、女という幻想、妻というしがみつきを
捨てて<自立する>ということがいかに重要であるを
確信していきましたから
結果的には大変良かったと思います。
夫に依存しない
夫を一切拘束しない
そして心理支配もしないという
ことを次々に自分に課していきました。
夫の向こうには多くの社員の人々の幸せがかかっいている
だから
私と家族の小さな幸せは私が担い
彼を家庭に縛り付けるのはやめたのです。
こう書くといかにも簡単ですが
でもね、私にとって辛く、苦しい毎日でもあり、
よくぞがんばったと思いますよ、つくづく…笑!
そういう中で彼が社長になり、会長になり
そして退任をむえかたのですが
その時私は是非社員の人たちに
如何に彼が社員を愛し、
そして会社とは
●お金を稼ぐ場であると同時に
●ひとが生きる場でもあるということを
彼が人生をかけていかに実現しようとしたかのメッセージを
贈ることを私の
彼と会社への最後の仕事として
映画を創りました。
「真艫」とはつれあいの口癖で
大海原の中を
追い風をうけた船が
一心に真っすぐ進んでいくことです。
そういう「真艫」な会社であるように
という願いと理想の中で
その会社を作るという彼の理念を
現わした言葉なのですね。
能勢さんと村上さんにお願いをして
退任する1年半前から準備して撮影を始めました。
ただ、彼が退任するということを
まだまだ公にすることはできませんから
そのことを社員の皆さんや
関係者の皆さんに気取られないように
家族の物語のように仕立てて
作りました。
だから
当然のように私もそこに出演せざるを得なくなりました。
そして、ここからが今日の本題。
つまりその映像をみて
そこに出てきた自分の姿を見て
私は愕然としました。
そこには、歳よりも何倍にも老けた
老婆の私がいたからです。
つれあいのことは
彼がいつも若々しくいるようにと
着衣やその他については、
わたしが演出しました。
しかし一方私自身のことについてはいつも、
そんなことなどどうでもいいと
考えてきましたし
虚栄的なことに対しては
私はかなりストイックに生きてきましたから
いつの間にか
こんなお婆さんになっていました。
映像の中の自分を見ながら
悲しくもあり哀れでもあり
なんだかがっくりしました。
しかし考え直しました。
その姿こそ
私であり、
私以外のひと達には
その姿こそが、
見えている。
あゝこれが私の姿なんだと
あらためてしげしげと自分を見て
最後にその自分を
懐に受け入れました。
女であることなんか
とっくに捨てて、
妻であることも捨てて、
むしろ思想家としての自分こそが
彼を支え、
会社を縁の下で支える役割を自分に課したのですから、
これでいいのです。
そして
映画の編集についてすべて村上監督に
映像は能勢さんにすべてお任せしました。
特筆すべきは
能勢さんのカメラです。
能勢さんのカメラマンの眼は容赦ない
そして厳しいです。
それに驚き、
だからこそ
最後には
大きな信頼が沸々と湧いてきました。
それは能勢さんのカメラの目線の
厳しさと率直さであり
そこには
ごまかしようのない、
私の本質が映っている。
だからこそ
能勢さんが撮ってくれる私は
彼が素敵だと思ってくれている私であり
そのカメラの眼に私は能勢さんの
人間として愛情を
感じました。
そしてそれを
村上さんが容赦なく編集していく。
村上監督はもう半ば強引に
それも容赦なく
グイグイ押してくる監督でしたよ…笑!
ご自分でいうような傍観者どころか
もう完璧な指揮官としての監督でしたよ!!
でもね
そのことがほんとうに嬉しかったです。
あゝ、素晴らしい撮影クルーに会え
私の本望も果たすことができました。
そして私もまた、
ここから大きな転換をしました。
自分の幻想にしがみつかず
自分へ固執せず、
大人として成熟し
老人として
如何にこの世の最後を
人々と一緒に生きるかです。
さらに続きがあります。
それはこのシリーズのタイトル
「智に働けば角が立つ」とは
どういうことであるかです。
では
つ・づ・く…笑!!!
●「MIZUTAMA」が更新されました。
ドキュメンタリー映画の村上浩康監督のインタヴュー記事です。
メッチャ面白いですよ!

続きを読みたい人は
どうぞ買ってくださいな!!
●海山かのんさんの漫画も
掲載されています。
北海道の人必見!!
今後の掲載予定の目次も
ご覧ください。
●「MIZUTAMA」公式サイトでも私のライトエッセイを書いています。
こちらは少々過激です・・・笑
