第二回映画祭『さがみ人間未来 FilmFestival』 |
行って来ました。
大変楽しゅうございました。
そしてうれしかったのは
このイヴェントのマスコットの
<サニフちゃん>に会えたこと。
※サニフとは、
相模のサと、人間のニと、フェスティバルのフ、をとって
<サニフちゃん>です。
楽しいというのは
バラエティーにとんだ作品を見せてもらいながら
いろいろなことを
興味深く考えたことで
とても充実しました。
参加作品は16作で
私が見たのはその中の9作です。
そのなかで私がいいなあ~と
思ったのは3作品です。
そして強烈におもしろいけど・・・???という作品がひとつ。
良いな~と思ったのは
・星野富弘・故郷の四季
・無名碑
そして
・広島原爆・魂の撮影メモ
です。
そして強烈に面白いけど・・・???
というのは
・こどもミライという作品です。
今回はこれらの作品について
二回に分けて
書いてみます。
・星野富弘・故郷の四季は
星野さん自身がもうご自分の世界を
しっかり持っておられるので
映画はそれを追体験するとい形であり、
それだけでとても満足しました。
星野さん自身がナレーションをして
東村の四季を語ります。
ご自身が車いすにのって
村の道をゆかれますが、
その姿をみているだけで
とても気持ちがなごみました。
実は
そのまえの
強烈に面白いけど・・・???の作品が
これでもか、これでもかと自己顕示を
押しつけてくるのに
疲れ果てていた私にとっては
淡々と気負いもなく語られる星野さんと
美しい田園の映像が
一服の清涼剤となりました。
簡素にまとめられた
いい作品だと思います。
そして「無名碑」については
このブログで何度もご紹介したので
今回は
省かせていただきます。
今回もっとも私が感動し、感心したのは
『・広島原爆・魂の撮影メモ』です。
この作品は、
能勢広監督のおじいさんである
鈴木喜代治カメラマンが
広島の原爆投下一カ月後に
生物と植物の調査と記録を
するために入ります。
その時にメモされたものが
今回アメリカ進駐軍から返され
その内容を孫の広さんが映画にしたものです。
メモには
撮影の進行と
原爆投下の後の広島の臨場が
訥々とメモされていました。
メモは箇条書きではありますが
メモの言葉の行間には
語られていない
喜代治さんの思いがあり
それを映画にすることは
大変難しいことであったと思います。
映画は広島の原爆ドームの映像から
入ります。
この原爆ドームの映像が
とても綺麗でした。
これはやはり能勢カメラマンならでの
映像だと思います。
さらにそこにいきなり
張り詰めた
ピアノの一音がカーンと
空を切ってはいります。
この一音で
一切通俗的なものが
一掃されて
すべてが制されます。
この一音だけで
観客は
映画を予兆します。
そして映画のページが
開かれていきました。
メモにかかれた文字と
当時の原爆投下後の
広島の映像とが
かわるがわる流れながら
映画は進みます。
スクリーンには
メモの内容が
印字されて行きますが。
手帳の文字に書かれたことだけではなく、
鈴木喜代治さんが
文字にはかかなかった、
或は
文字にはできなかった、
文字と文字の行間にある空白(沈黙)と時間こそが
この映画の主役なのですね。
以前私は完成映画になる前の
映像を見せていただき
下記のように書きました。
○
感情にならない感情
言葉にならない言葉
映像の中に淡々と流れるそれを
映像を見ている者と
映像に託した者とが
ひとつの沈黙の中で
凝視している。
しかし
そこにはお互いが沈黙のうちに
なにかを
確認している。
深い深い言葉にはならない大事な大事なものを
あなたも
私も
わかっている。
○
とうてい文字などにはできない
喜代治さんの胸の奥にしまわれた
暗渠のようなものを
どうしたら映画にできるのだろう!
願わくは
それがいわゆる
反原発の政治的プロパガンダのように
ならないように。
決して
安易な感情として
消費されないように。
と・・・。
その深い懊悩を映像にするのは
大変難しいことではあります。
そして
今回、映画として完成されたものを見ました。
それは見事に端正に
映画にされていました。
映画冒頭の美しい原爆ドーム
そして
カーンというピアノの一音は
その一音だけで
この映画がもつ厳しさの中へと
観客を惹きこみました。
しかし、
しかし
厳しいけれど
そこには
安易ではない
優しさがある。
映画は一切の感情を排して
淡々と進行していきます。
喜代治さんが語らなかった
そして本当は
喜代治さんが
語りたかった
言葉にはならない
その胸につまったものを
映画が語ります。
感情に溺れず
観客の理性の魂が
それを受け止めていく。
押し殺したような沈黙は
押し殺しているがしかし
その底流に流れているのは
限りなく優しい人間への愛です。
広島原爆投下の
その瓦礫の中で
撮影を記録した木村カメラマンも
メモをかいて撮影を進行させた
喜代治カメラマンも
そして今、
映画をみている観客も
そこに何が起きたのかを
自分の胸の中では
知りつくりしている。
しかしことばには
できない。
沈黙のうちに
こうべをたれるだけだ。
でも
皆が
繋がっている。
その重くてどうしようない気持ちを
ふたたび
ピアノの音楽が
救いあげてくれました。
植田彰さんの音楽と
稲岡千架さんのピアノは
終始
映画と私たちに寄り添ってくれました。
最後に映画は
メモにあった
原爆投下の中心地で
当時被ばくしても生き残っていた
松の木を探します。
しかし
そこには松はありませんでしたが、
でも、
広島の空のしたには、
被爆した楠の木が
今も枝を大きく翼のように広げて
生き残っていました。
自分の感情を厳しく突き放し
喜代治さんのメモと
映像と
そしてピアノの音に
全てを託し
さらに
観客を信頼して
ご自分の感情の移入を
徹底的に排して編集した能勢さんに
私は拍手を送ります。
最後におじいさんのメモと
お父さんの映画と
そして
この映画祭のために
着ぐるみを着て応援してくれた
サニフちゃん
ほんとにありがとうね!!
そしてまた
来年も会おうね!
さて次回は例の
『強烈におもしろいけど・・・???』
の映画について
書きます。