映画「どこかに美しい村はないか」漱石「夢十夜」百閒「冥途」そして 萩原朔太郎の「猫町」を読み終えて。 |
萩原朔太郎の「猫町」を読み終え、
再度素晴らしい文章力に驚く!
漱石の文は品格があり、
ほんのりとした色香がある。
それに比べ百閒の文は、雑味の中に
彼のいこじなユーモアと自虐があり面白い。
そして朔太郎!
素晴らしい才能を感じます。
文章には、
玲瓏な技巧と風雅さがあり、さらに
何とも言えない官能の誘惑を感じる。
高校生のとき、朔太郎の詩「黒い風琴」を読み
こころが震えました。
「黒い風琴」
おるがんをお弾きなさい 女のひとよ
あなたは黒い着物をきて
おるがんの前に坐りなさい
あなたの指はおるがんを這ふのです
かるく やさしく しめやかに 雪のふつてゐる音のやうに
おるがんをお弾きなさい 女のひとよ。
だれがそこで唱つてゐるの
だれがそこでしんみりと聴いてゐるの
ああこのまつ黒な憂鬱の闇のなかで
べつたりと壁にすひついて
おそろしい巨大の風琴を弾くのはだれですか
宗教の激しい感情 そのふるへ
けいれんするぱいぷおるがん れくいえむ!
お祈りなさい 病気のひとよ
おそろしいことはない おそろしい時間はないのです
やさしく とうえんに しめやかに
大雪のふりつむときの松葉のように
あかるい光彩をなげかけてお弾きなさい
お弾きなさい おるがんを
おるがんをお弾きなさい 女のひとよ。
ああ まつくろのながい着物をきて
しぜんに感情のしづまるまで
あなたはおほきな黒い風琴をお弾きなさい
おそろしい暗闇の壁の中で
あなたは熱心に身をなげかける
あなた!
ああ なんといふはげしく陰鬱なる感情のけいれんよ。
若くて何も訳がわからない女学生の私でしたが、
なんだか言葉の中に魔術があるようで、
オルガンを弾く女の白い指先のが
オルガンの上で怪しく踊る官能に
胸がドキドキしました…笑!
同じ頃、谷崎潤一郎の
「其れはまだ人々が「愚」と云う貴い徳を持って居て、」から始まる
「刺青」という作品を読んだ時も、
ませくれた女学生が、
感覚的にしか理解できない「性」の入り口で、
美しいということが
ボンヤリとわかったような気がしました。
今読み返してみると
やはり明治大正の文豪はスゴイ!
文章が端正で、言葉に色気があります。
特に朔太郎のそれは、幻想的です。
日常の中から幻想の異次元へと連れだされ、
私の感覚がが上昇していきます。
※私はコーヒーを飲まないのにね~・・笑!
本を読むとは。
読みながらも、
思い出すのは、まだまだ未熟な女の子の私が
作家と向き合い、
ゆらゆらとたばこの煙りをくぐらせながら
作家が語る遠い異次元のそれに
興味津々で耳を傾けている。
久しぶりに読んで、
こころが新鮮になりました。


