たったひとり、夢の中を行く! ジェシーノーマン「月夜」 |
シューマンの歌曲をこれほど美しく歌うのか、という感動がわきました。
静けさの真っただ中に、ゆったりと彼女の声が流れてゆく。
磨かれ,芳醇な知の世界の中で、私の魂が癒されてゆく。
なぜかうっすら涙が浮かんできた。
歌詞はアイフェンドルフの詩です。
月夜
それは、まるで空がそっと、
大地に口づけしたかのようだった。
花がほのかに輝く中で、大地が
空のことだけしか夢見ずにはいられないというほどに。
そよ風が野原を渡り、
やわらかに穂が揺れ、
森はひそかにざわめいていた、
星のきらめく夜だった。
そして僕の魂は
大きく翼を広げ、
静かな大地の上を飛び立っていった、
まるで我が家へ帰って行くかのように。
まだまだ心に余裕があった頃の人々の、
幻想の世界ですね。
ジェシーは私より二つ上の74歳です。
同じ時代をいきてきました。
彼女の歌には、研ぎ澄まされた静けさがあり、
明瞭な音程というか、ゆるぎない音程というか
その一本の線にのせて、詩が語られていきます。
昨日からずっと
「ああ巨きな時代が終わったのだ!」という感慨が
私の中で巡っています。
敗戦で無一文になった日本、
戦前の階級社会が壊れ平地になった日本では
誰もが平等になり、そして
懸命に働いて新しい日本が始まりました。
※「平地になった」という表現は堀田善衛先生の言葉です。
平地になつた日本の中
よくも悪くも大衆文化が台頭し
テレビやメディアを通じで日本中を席捲していきました。
それがよかったのか、どうだったのか、
今こうなってみると、
なんだか大切なものが、大衆文化に踏みつぶされた気も
しないでもない。
どんどん隅っこのほうへ追いやられ、
それでも私は自分の懐にそれを包み込んで生きてきた気がする。
シーンとした中で月を愛でる。
草原を一人で散歩しながら思索にふける。
たった一人の自分の世界が知の言葉や、音楽とつながり、
そこには誰も介入してこないという空間と時間がある。
そこで私はやっと,ホッと一息をつく。
ジェシーがいて、シューマンがいて、シューベルトもドボルザークもいて
道元がいて、良寛がいて、そして堀田善衛がいて、さらに岩田慶治先生がいると思うと
ああ、心がだんだんときめいてきた!!
最後にジェシーノーマンの「月夜」シューマン作を
よかったらどうぞ!