正平爺ちゃんと松蔵じいちゃん! |
その絵を見に行った、西部デパートのギャラリーに。
本当に自分が好きなら買えばいいと思うが、
迷っているらしいい。
その絵の値段は30万円あまり、
しかし完全な魂の抜けた売り絵でした。
そのときふと私は去年銀座の画廊で見た松田正平翁のサムホールが、
たぶんそれくらいで買えたような気がして、
彼女にそれを勧めたいと思っていたら・・・。
この前日曜美術館で松田正平翁のことをやっていた。
私が気付いたときはもう半分以上終わっていたが、
それでも、最後の自画像デッサンや犬のハチの絵それに、
バラの作品も見ることが出来た。
松田翁のことは、
まだ翁が生前のときのアトリエ訪問番組で知った。
ごみやくずが散らかり放題のそのアトリエで、
90になるおじいちゃんが、無心に絵を描いていて、
自分はもう、ドストエフスキーみたいな、
難しいことはいやなんだと言っていた・・・苦笑!
そしてキャンバスに描いて絵をかみそりでゴリゴリと削って、
本当に美しい絵を描きたい、」花の本当の美しさを!
といっていた。
絵は実際に本物を見ないとなかなかそのよさはわからないが、
少なくともこのおじいちゃんだけはいいなあーと
人間としてとても魅力の有る人に思えた。そして、
本質だけを残して、
饒舌なものがすべてそぎ落としてありました。
2、3年前のことですが、
銀座の奥野ビルにあるギャラリー文化園で、
着物にはかま、それもぼろぼろで、少し汚い、・・を着た、
本当に貧乏をしながらも黙々と絵を描いてきた作家です。
これといって激しいものもなく、奇をてらわず、
ものすごく普通に、でも、とても存在感がある。
一年に一度、遠距離バスを乗り継いで、
九州のの門司から来るらしい。
松田正平翁は晩年山口県の宇部にすみ、
周防灘を書いていて、
永田松蔵翁も門司と下関の風景を書いている。
実は私は門司で生まれ、下関長府で育ちました。
二人ともふるさとの誇りの爺ちゃんです。
二人ともが素直に、生まれた時のように心を澄まして、
正平爺ちゃんはユーモアとやさしさと、
松蔵爺ちゃんはやさしさと、静寂を。
正平爺ちゃんの残した言葉!
「油絵がわからんから、生涯描くでしょう。本気で。
だから絵を描くのに邪魔になるものは、出来るだけ捨ててきた。
自分がきれいだなと思ったものを、
率直に表現したいというのが、
私の願いだ。」
私が買った松蔵爺ちゃんのりんごと洋ナシの絵は、
額をはずして、キャンバスのまま、居間に飾りました。
額という虚飾をはずしてその本質だけで、
絵は沈黙の中、居間全体に光を放っています。
ふたりとも、