旗をたてる・・・! |
加茂縞織りの
スカート
若いころに読んだ本で
いまでも心の中に生きている話がある。
ドイツ文学者の高橋義孝氏の
書いたものだったと思う。
氏があるとき俗文学の作家を連れて
うろおぼえで申し訳ないが
たしか
藤枝静男のところを訪れたときの話だったと思う。
その俗文の作家が世俗を超えていくには
どうしたらいいか・・というような
話になって、
そのとき藤枝静男が"旗をおたてなさい・・”と言った。
”旗をたてる”とはどういうことか・・と
考えているうちに、
ある冬の日ゴルフ場で
ひらひらと寒空にたなびく旗をみて
はっと理解した。
冬の人気が少ないゴルフ場で
北風に
孤高にヒラヒラはためく旗・・!
それは自分がナニモノであるか
しっかり打ち立てて、
世間になびかず、
日差しの暖かい日も
土砂降りの雨の日も
よわよわしかろうと、
頼りなかろうと、
高踏なる自分の旗をたてろ・・という
意味だと・・・。
最近の私は
このことがほんとうに
身に沁みる・・。
自分の旗が立ち始めて
いちばん変化したのは
他人との距離・・。
旗が立っていないときは
他者との距離をどうするかが
いつも
頭痛のタネだった。
この人とは
どう距離をとったらいいのかと。。。。
しかし
いまは
自分は何もせず
他者が勝手に距離を取ってくれる。
私は他人との距離など
いつさいお構いなく
自分が立っている観がある。
常に自分を中心に
風景が見えてきて
以前のように
距離が取れなくて
おたおたすることが
ほんとうに少なくなった。
でも
時々振り回されることもありますヨ
人間だからね・・。
旗を立てる。
この言葉がこんなに
実感を持ってくるとは
ねえ・・。
高橋義孝も
藤枝静男も
そしてついこのまえ、
小川国夫先生も
いなくなりました。
寂しいことです。
小川先生には
私が密造した葡萄を差し上げ
お礼に書を頂きました。
若き日のことです。
サアー
わたしも最後まで
頼りないけど
旗をたてて
いきますかねえ・・。
ヒラヒラ・・風にゆらめく
旗をねえ・・・。