一夢の中・・・! |
特に春が近づくと、
良寛の親友の有願和尚が亡くなったのを忍ぶ
良寛の漢詩が浮かんできます。
その詩を思い浮かべたとたん、
桃の花の香りがしてくるのです。
不思議ですねえ・・・・。
そして何となくが春のかおりがしてきて
こころがウキウキして来ます。
毎年
桃の花が咲く頃になると
その詩くをご紹介しています。
良寛はその親友有願とよほど気があったらしいんです。
彼は夢の中で有願和尚と問答をしています。
。。。
食を乞うて、市朝に至る
路に旧識の翁に逢う。
我に問う、師は胡為(なんすれ)ぞ
彼の白雲の峰に住むかと、
我は問う、師は胡為ぞ
此の紅塵の中に老いゆるかと
答えんと欲して、両ながら道わず(いわず)
夢は破る、五更の鐘。
托鉢に市中にやってくると、
道でばったり顔見知りの老人にであう。
彼は私に問いかけた
いったい何がゆえにあの白い雲の上の山のなかに住むのかと。
わたしも彼に問いかけた、あなたはなにゆえに
こんな俗っぽい町の真ん中で一生を老いるのかと。
相手の問いに答えようとして、両方が何も言わないうちに
夜明けの鐘がなり、夢がさめた。
、
有願和尚の庵は信濃川の支流が流れる白根の里にあり
田面庵(たのもあん)といいます。
両岸に桃の堤が続いており
とても美しいらしいのです。
良寛はその光景を
桃の花が岸をはさんで霞のように咲いており
そこに流れる藍色の川は
そのまま
天空に繫がるように流れている・・・と
漢詩に詠んでいます。
二人ともが
禅僧侶らしく
孤高と質素を生き
赤貧と行乞の極みを生きようとしている
良寛にとっては自分の心を分かち合える
唯一の同僚だったかもしれません。
良寛は世俗をはなれた深い山のなかで、
有願は、世俗の真っ只中に居していましたが
ほんとうはどちらも問わずしても
通じ合い
それぞれの域を生きていたのだと
思います。
この詩は
両ほうが
おまえさんこそ
どうなのさ・・・!と
言い合っているような親しみがあります。
この夢の詩の下敷きには
李白の世界があるそうですが、
良寛が有願和尚にたいして
こころをゆるしていたのだなあーと
思います。
静寂の極みのような良寛は
情熱的な有願と気があったのかもしれません。
新年が来るたびに
良寛を慕う自分がいます。
私の人生の師匠だと思っています。
良寛の漢詩をひもとき
そのなかにある
「人間の是非をとう、一夢の中」
という
一行に
身が引き締められます。