人魚姫は逞しいかった!!その2 |
そこにこそ人間のリアリティが
みえてきます。
アンデルセンも「人魚姫」を書いた時は
とても感傷的になっていたのでしょう。
しかし現実は、
感傷などにひたってはおれないのです。
そこはアンデルセンはしたたかでした。
彼はその作品と伴にだんだんしたたかに
逞しくなっていきます。
その変化は確実に顕われてきます。
「白鳥の王子」くらいからですかね。
白鳥の王子に出てくる<エリサ>は
もうたった一人で真夜中の墓場でにイラ草を摘みにでかけ、
さらに悪の大僧正と戦います。
そして「みにくいアヒルの子」「雪の女王」を
書きながら
晩年のアンデルセンは
大変シニカルになっていきます。
もはや子供のためというより
大人を対象にしたように、
感傷なんていう軟弱なものを
突き放してしまいます。
現実なんてそんな甘くはない
と、
悲嘆し絶望するけれど
しかし
先に進もう!!
という感じですかね~。
アンデルセンはバイセクシャルでしたからこそ
その女性的繊細さが作品の要所で
キラキラと煌めいています。
しかし、それだけじゃ~ない!
その裏には男性的な狡猾さも
ありました。
前回書いたように
夫婦の険悪な場の空気など
一切かいさず、
延々と泊まり続けるアンデルセンに
デイケンズは苛立ち嫌悪しますが
アンデルセンにしてみれば
せっかくの英国滞在です。
どこ吹く風と宿屋代わりにしてしまうのですね・・・笑!
でも私はアンデルセンが
世界作家になれたのは
この男性的狡猾さと女性的繊細さが
人間のリアリティを
感傷的ではなく
立体的にとらえていたからだと
思います。
それを見事に著わしているのが
「影」という小説です。
そして
私が好きなのは
「あの女はろくでなし」という童話です。
ここには洗濯女をしながら
アンデルセンを育てた彼の
母親のことが書いてあります。
彼が50歳の時に書きました。
最下層民から
自分の才能ひとつを持って
人生の旅をしたアンデルセン
決していいことばかりではなかったはずです。
しかし
彼の自分に対する信頼と
肯定は
すばらしいです。
それこそを
読み取ってもらえると
いいな~と
いつも思います。

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